2014年4月20日日曜日

混合診療は患者のためになるのか?

本日、2014年4月20日の朝日新聞の社説に混合診療解禁について書かれていました。
全文はこちら)。
(本日以降、この記事をお読みになる方は、リンク先の「社説バックナンバー」からアクセスしてください。)

「混合診療」って何?

そもそも「混合診療って何?」という方もいらっしゃるかもしれませんので、簡単にご説明いたします。

診療には、健康保険が使える診療と使えない診療があります。

混合診療では、この両方を併用し、健康保険が使える診療に関しては健康保険でまかない、使えない診療に関しては患者さんが費用を支払います。

現在は、患者さんから健康保険が使えない診療の費用を徴収した場合、その病気に関する全ての診療費は、「自由診療」として患者さんが全額負担しなくてはなりません。

ただし、差額ベッド代や一定の先進医療などの「例外」は存在します。

今回、浮上してきている案は、この「例外」を増やす、というものです。

混合診療の何が問題なの?

①貧富の差で受けられる治療が限られるかも

「『例外』が増えれば、混合診療でも全額自費ではなくなるから、患者さんのためになるのではないか?」という意見があります。

しかし、本当に患者さんのためになるのでしょうか?

日本医師会は、混合診療に関して、下記の問題を指摘しています()。
(1)政府は、財政難を理由に、保険の給付範囲を見直そうとしています。混合診療を認めることによって、現在健康保険でみている療養までも、「保険外」とする可能性があります。 
(2)混合診療が導入された場合、保険外の診療の費用は患者さんの負担となり、お金のある人とない人の間で、不公平が生じます。 
(3)医療は、患者さんの健康や命という、もっとも大切な財産を扱うものです。お金の有無で区別すべきものではありません。「保険外」としてとり扱われる診療の内容によっては、お金のあるなしで必要な医療が受けられなくなることになりかねません
こんなことになったら、お金のある患者さんだけが受けられる診療が出てきますよね。

たとえば、先端巨大症に使う代表的な注射剤を考えてみてください。1か月に1度打ちますが、この1本の注射、一般的な用量で20万円を超える薬価です。このようなお薬が、健康保険が使えない診療となってしまったら、一体、どれだけの患者さんが治療を継続できるでしょうか?

つまり、お金が有るか無いかで、治療が受けられるか受けられないかが決まってくるようになってしまうのです。

また、「健康保険は使えないけど、例えば、海外では安全性も有効性も確立されている治療法がある。こういった治療を混合診療で受けられるようになるのだから、患者さんにとってプラスになるのでは?」という意見もあります。

しかし、これもおかしな話ですよね。

本来、安全性・有効性が確立されているのであれば、速やかに健康保険が使える診療にできるようにする枠組みを作れば良い話です。

こういった問題を、朝日新聞の社説は、このように書いています。
これまで混合診療が認められた治療法は、安全性と有効性を確かめたら公的保険の対象に移し、誰もが使えるようにすることを前提にしている。 
今回の提案には、この前提がない。効果が認められた治療が「選択療養」にとどまり、金持ちしか受けられないなら、医療の格差は固定化される。
安全性も有効性も確立されている治療法が、いつまでも健康保険が使えないままにされてしまったら、せっかく良い治療法があっても、その治療を受けられない患者さんも出てくるので、これは大きな問題です。
②安全性・有効性が確立されてなくてもOK?

さらに、安全性・有効性が確立されていない治療法を選択させられてしまう危険性もあります。
高度かつ先進的な医療であれば、患者が内容を理解することは非常に難しく、患者の自己責任にゆだねることになります。治療困難な病気と闘っている患者は、藁にもすがる思いで安全性・有効性のない治療法や、エビデンスのない民間療法を選択させられてしまうおそれもあります。(
安全なのかどうか、効くのかどうかも分からない治療をどう思いますか?

いかにも怪しげなものなら選択しないかもしれませんが、それでも、難病の患者さんなどは、藁をもすがる思いで安全性・有効性が確立されていない治療法を選んでしまうかもしれません

それに、医療は専門性が高いので、患者さんはお医者さんを信用するしかないことが多々あります()。ですから、患者さん側がよく分からないうちに、安全性・有効性の確立されていない治療法を選ばされてしまうこともありうるわけです。

本来はどうするべきなの?

本当に患者さんのことを考えたら、混合診療ではなく、安全性・有効性を客観的に判断し、そこで安全性・有効性が確認されたものに関しては、健康保険が使える診療にする、ということを考えるべきではないでしょうか。

日本医師会は「新しい医療の提供にあたっては、安全性・有効性を客観的に判断することが必須であり、さらに、将来の保険収載が大前提であります。」と主張しています()。

朝日新聞の社説にも、「きちんと客観的に評価できる臨床試験の枠組みで進めるのが筋だ。」と書かれております。

本当に患者さんは混合診療を求めているの?

「一般社団法人 日本難病・疾病団体協議会(JPA)」は、この案に反対する要望書を提出しております。具体的には、下記の通りです()。
一、政府と規制改革会議は、混合診療「原則禁止」を堅持し、必要な医療は保険で受けられるようにしてください! 
一、データの集積と安全性の確認がない自由診療による治療は、多くの国民の健康被害を拡大しかねないものであり、国による監視と指導を強めてください! 
一、国民の誰もがわが国の到達した先進的な医療を安心して受ける事ができるよう、国民皆保険制度を堅持し、充実させてください!
また、「10年前の混合診療論議では、高価な未承認薬を使うがん患者らの声が一部解禁を後押ししたが、今回はそれも聞こえてこない。」とのこと()。

一体、誰のための案なのでしょう?

<参照URL>
混合診療解禁―患者の利益になるのか (朝日新聞 社説 2014年4月20日付)
保険診療ってなに?~混合診療の意味するものと危険性~(日本医師会)
国民の安全・安心を守るための医療について (日本医師会
規制改革会議が事実上の混合診療「解禁」案を提示 JPAは、この案に反対する要望書を提出しました(JPA)

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