2011年12月11日日曜日

意思決定は患者と医師の共同作業

以前、精神科の主治医に「先生は天才医師ですよね~♪」と言ったことがあります。これは私の本心でした。「あんなに大変だったのに、こんなに回復するなんて、よっぽど主治医が凄いのよね~」なんて思っていたのです。

そしたら、先生がこんなことをおっしゃいました。
「僕が天才なのではなく、SDM、Shared Decision Making がうまく機能したからです。つまり、『信頼できる医師』ということでしょうか。まぁ、そのほうが『天才医師』なんて呼ばれるより、ずっと嬉しいですね。」

「SDM かぁ…。確かにO先生とはSDMがスムーズよね。」と思いました。

SDM (Shared Decision Making)とは、患者と医師の共同作業として治療の意思決定を行っていくことです。つまり、SDMでは、医師が一方的に治療を決定するのではなく、患者も一緒になって決定をしていくんですね。

医師が治療方法や治療薬を選び、その効果と副作用をよく説明する―これも良い医師のあり方だとは思うんです。実際に、治療に関してきちんとインフォームド・コンセントをしているわけですから。ただ、これだけだと、患者側としては「やらされている感」が拭い切れないんですよね。このケースだと、あくまでも治療の決定権は医師のみ、といった感じです。

しかし、これがSDMですと意思決定権が患者にもあります。患者も「私もその治療が最善だと思う」という考えを持って、積極的に治療に参加するのがSDMである、と私は考えております。

例えば、私は先生には「どういうお薬が良くて、どいういうお薬を避けたいのか。」「私はどうありたいのか。治療することでどのように変わりたいのか、また治療することで変わって欲しくないことは何なのか」といったことを知ってもらえるよう、自分なりに努力してきました。こうすることで、私のニーズに合ったお薬を選択して下さることが多くなりました。

ただ、急性期の処方で、どうしても患者さんの要望に添えない場合もあります。私の場合、そういったお薬にリスパダールがありました。
「眠くなるお薬は、何も出来なくなるし、何も考えられなくなるから避けたい」
という私の要望から、このお薬は程遠いものでした。
それでも、O先生がこれを選んだ理由も私は知っております。
Dr:「自殺念慮が酷い時は、色々と余計なことは考えないほうが良いんですよ。また、焦燥感が酷い時は、鎮静することも必要だと思いませんか?」
私:「う~ん、確かにそうかもしれないですね。思考が健全に働いている時の考え事は良くても、死ぬことしか考えられない状態で考え事をしても良いことは無いかもしれないですね。ただ、あまり眠いと何もできなくなってしまいますよ。」
Dr:「あなたの場合、身体を休めることも必要ですよね。実際に眠れていないわけですから。それとも、今、どうしてもしなくてはいけないことがあるんですか?」
先生は意見の押し付けではなく、あくまでも「話し合いをしましょう」といったスタンスでいて下さったので、私も冷静に話し合いに参加することができました。最終的には私もリスパダールの処方に納得し、「それなら、リスパダール、飲んでみます」と、自分で服用を決定しました

このように、患者の要望と、実際のその人のニーズが両立しえない時は、患者が納得できるよう丁寧に説明をしてくれる、患者も医師の説明をよく聴き、そして共に話し合う。その上で最終的に患者が決定する、という特徴もSDMにはあるように思います。


ただ、SDM って簡単ではないんですよね。第一に、医師と患者の間に信頼関係がないと、全くもって機能しません。第二に、お互いに意見を尊重し合う「傾聴」の姿勢が取れていないと、なかなかうまくいかない、という側面もあります。患者の要望の一方的な押し付けばかりで医師の話を聴かないのももいけないですし、同じように、医師の提案の一方的な押し付けも良くないですよね。やはり、互いの意見を「理解しよう」と思って聴くことが求められてきます。そして第三に、患者も病気や治療について勉強する必要が出てきます。知識なくして治療の決定なんて出来ないわけですから。

このように書くと、SDM がとても大変なことのように感じられるかもしれません。確かに簡単ではありません。しかし、その成果はとても大きなものだと私は考えております。何よりも、患者の意思も治療の決定に反映されているので、患者の満足度も高いものとなります。また、「自分で選んだ治療」「自分の健康は自分で守る」という意識があるので、治療へのモチベーションも上がります。また、お薬が出ている場合、きちんと服薬できる率も高くなるように思います。ですから、SDM がしっかりと機能すると、治療成果は格段と上がる、と私は考えております。

SDM というアプローチ、もっと広がると良いですよね。


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奇跡だ!(精神科領域)

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