2010年11月15日月曜日

IGF-1が上がっても頑張って食べる!

栄養状態の改善と共に上昇するIGF-1

以前に「摂食障害とIGF-1&GH」という投稿をしました。
IGF-1は栄養状態のマーカーともなるため、栄養状態が良くなるとIGF-1は上がるそうです。

これが心配で私は摂食障害と大うつ性障害のための入院した後も、適正体重をキープすることに大きな抵抗を感じていました。「摂食障害が良くなったら、今度はアクロが悪くなるの?」などと思って「だったら、痩せたままがいい。いろんな問題を同時に解決してくれるもの。」と考えてしまいました。そのため、退院後に再び減量。その後の外来診療で、ある日、精神科医に「あなた、一時期よりも痩せたよね。」と指摘されてしまいました。あの時の私の心境は、いたずらの最中に見つかってしまった子供のようでした。「増やした方が良いですよ。まだまだ増やして大丈夫だから。」と先生に諭されたので、色々と悩みはしましたが、体重を増やすことにしました。(今はだいぶ、「普通」の体重です。)

そして、やはり私の懸念通り、体重の増加と共にIGF-1の数値も上がっていったのです。2010年に入ってからですと、IGF-1が一番低かったのは4月22日、つまり私の体重が最低の時期で、値は184ng/mLでした。そして、IGF-1が一番高かったのは9月1日、私の食行動が安定化した時期で、値は338ng/mL。みごと、基準値越えです。


体重増加とIGF-1上昇のダブル・パンチにパニックの私

10月2日(土)の内分泌内科の予約外来時に、この338ng/mLという数字を知らされたのですが、その時から何となくパニックになっていたようです。翌週の5日から8日まで食べ吐きが止まりませんでした。ほとんど反射的に「体重を落とさないと!」と強迫観念に捕らわれていたのです。

10月8日(金)に、とうとう精神的な限界を感じ、精神科主治医に電話。その日のうちに予約外で主治医に直接診ていただきました。精神療法でだいぶ落ち着きを取り戻し、少しは冷静に物事を考えられるようになりました。

「私が適正体重をキープしてこそ、IGF-1の値は腫瘍の状態を把握するのに信頼性のあるデータになるのかもしれない。」「IGF-1がどうであれ、私は適正体重をキープしなくちゃ。低体重でいた方が、よっぽど体が辛くなるわよね。」と思うようになり、また徐々に食べ始めました。栄養不足でIGF-1が下がっても、それはある種、偽りのデータのような気がしたのです。高血糖の人が、血糖値測定前の数日間だけ食事に気をつけるのと、私がしていることとが、とてもよく似ているように感じました。


「きちんとした食生活を心がけ、適正体重を保つよう、意識しよう。」

摂食障害の患者としての私の目には痩せることには大きな「メリット」があります。
  • 問題から目をそらすことができる
  • 「数字」という目に見える、分かりやすい物で自分の価値を客観的に決めることができる
  • 自分の目から見て、痩せていればいるほど美しい、と感じる
  • 痩せていると安心できる
  • 月経を止めることができるから、PMDDが無くなる
  • 頭がボーっとするので、あれこれ考えなくて良くなる
これだけのメリットがあっても、そのコストは非常に大きなものです。
  • 仕事ができなくなる
  • 全身倦怠感が悪化する
  • 入院が必要になる
  • 精神不穏になる
  • 自殺念慮が酷くなる
  • 食行動異常になり、生活が食に振り回されるようになる
  • 自分の本質的な価値が分からなくなる
  • 離人症的になり、生きている現実感を感じられなくなる
  • 常に食べ物のことと死ぬことしか考えられなくなる
もう一度、あの辛い思いをするぐらいだったら、適正体重でいたほうが良いのかな、と思い、最近では頑張って食事を口に運んでおります。会社の先輩も「ずいぶん食べられるようになったなぁ。」とおっしゃるぐらいです。

そんな中、未だに「今日は何も食べたくない。」と思う日があります。しかし、IGF-1の値やその他の要因に振り回されることなく、何とか気持ちに折り合いをつけながら、きちんと食べることができればいいな、と思っています。現在の毎日の目標は「今日1日だけでも吐かないで過ごそう。」というもの。地道に積み重ねていきたいです。

2010年11月1日月曜日

先端巨大症と精神疾患(文献)

先端巨大症と精神疾患は関係があるか?

私が自分の精神疾患の既往を精神科医と振り返る時、先端巨大症が無関係とは思えないことが実は多々あり、現精神科医とは「先端巨大症、摂食障害、うつ、PMDD(月経前不機嫌性障害)。これ、全部どこかでつながっているのでは?」という考えが少なからずあります。とは言っても、この考えを支持するような文献がなかなか見つからないので、単なる「妄想」に留まっているのが現実です。

では、なぜこのような考えに至ったのでしょうか?実は私は先端巨大症になってから著しい抑うつ状態になり、過食傾向になりました。また、下垂体のオペ後に月経が戻って来てからPMDDが始まりました。単なる偶然に過ぎないかもしれませんが、こういった背景があるので、どうしても因果関係があるように感じてしまうのです。

事実、先端巨大症と精神疾患の関係を示唆する研究報告は皆無ではありません。今回、このトピックについての文献を2つご紹介させていただきたいと思います。


J Clin Endocrinol Metab. 2010 Sep 15.
Increased Psychopathology and Maladaptive Personality Traits, But Normal Cognitive Functioning, In Patients after Long-Term Cure of Acromegaly
Jitske Tiemensma*, Nienke R. Biermasz, Roos C. van der Mast, Moniek J. E. Wassenaar, Huub A. M. Middelkoop, Alberto M. Pereira, and Johannes A. Romijn

先端巨大症が長期治癒している患者は、健常者および非機能性下垂体腺腫の患者に比べて精神疾患や人格特性が不適応となるリスクが高かったが、認知には有意な違いが見られなかった。これらの結果は、腫瘍自体やそれに対する治療が、というよりも、GH(成長ホルモン)が体内で過剰状態であることが中枢神経系(CNS)に非可逆的な影響を与えている可能性を示唆している、と見られる。
中枢神経系が過剰なGHにさらされると、非可逆的に中枢神経系が変化し、それが精神疾患や不適応人格特性といった形で現れるのでは、という仮説を筆者は立てているようです。あくまでも、先端巨大症と精神疾患/人格特性の間に相関関係があった、ということで、「因果関係」を示すものではありませんが、今後の研究の方向性を示す重要な研究報告であるかと思われます。


Eur J Endocrinol. 2009 Mar;160(3):367-73. Epub 2008 Dec 10.
Personality in patients with pituitary adenomas is characterized by increased anxiety-related traits: comparison of 70 acromegalic patients with patients with non-functioning pituitary adenomas and age- and gender-matched controls.
Sievers C, Ising M, Pfister H, Dimopoulou C, Schneider HJ, Roemmler J, Schopohl J, Stalla GK.

下垂体腺腫の患者は健常者に比べて人格特性の中では極めて強い不安傾向が見られた。先端巨大症においては、衝動性と新奇性追求(新しいものや冒険、リスクなどを求めること)が著しく低かった。
新規性追求が低いと「新しいことにチャレンジしたい」と思えないわけですから、抑うつや不安などにも根底では繋がっているように思います。また、「衝動性が低い」というと一見落ち着いていて良さそうですが、別の見方をすれば「意欲低下」とも見ることができるのではないでしょうか?


成長ホルモンが足りない場合、抑うつ状態になることがあるようですが、成長ホルモン過多の場合の精神状態への影響に関する報告はあまり見なかったように思います。そう考えると、これらの研究は先端巨大症の患者のQOLを考えるうえで非常に重要ではないか、と思うのです。